7月ももうすぐ終わろうかという曇り空のある日。

透き通った薄日の射しているスタジオで
白い壁を背に並ぶ器を撮影していた
カメラマンのMさんが何気なく一言呟きました。

「不思議なことに、ぜんぜん強すぎない。」

その声に誘われて、私もカメラのファインダーを
覗いてみると、カップたちが不思議な空気感で
並んでいます。

「着物で言えば、グレーに白の縦縞なんて
個性的でとても強くなるはずなんですけど」

では、白に薄茶の縞のカップが
地味かというと全く引けを取らない。

というより、むしろ互角。

そう、これが千秋さんの器なんだなと
思いました。

日常の中で無意識レベルにあったものが
カメラのフレームを通したとき、突然
露わになることがある。

私はずっと前から、こんなに彼女の器を
愛用しているけれど、その理由がこの時
腑に落ちたような気がしました。

間合い。

形がシャープになる一つ手前で
手を止める。

線が鋭さに迫ろうとする半歩手前で、
力をすっと抜く。

この形と線描に生まれる微妙な間合いに
私たちは魅了されているということを。

どこにあっても、埋没せずに
緩やかな存在感を持ちながら
私たちの暮らしの傍にある器。

そんな器たちに、この秋再び出会える
ことに喜びを感じています。

武田千秋 うつわ展

2017年9月23日(土・祝)~10月1日(日)

12時から18時 会期中無休

場所:ギャラリーKAI

メールDMまたは郵送ご希望の方はこちらからどうぞ