
2025年5月24日(土) ー6月1日(日) 13時から18時
冬澤さん在廊日:
5/24,25,26,27は終日、28は14時まで
冬澤未都彦さんは、山形県山形市にある
「やばつい工房」と名付けられた小屋で、
壁四方を埋め尽くす古書の中に一人
埋もれるように、ガリ版で一文字一文字、
文字を削り、手製本を作ってきました。
「ひとりの作家、ひとつの作品ごとに
文字を創造するという妄想を抱いた。」
(リアス・アーク美術館・冬澤未都彦展
カタログより抜粋)

思い返せば私が冬澤さんと出会ったのは、
今から25年以上前にさかのぼります。
「ギャラリーをやりたいのだったら、
雨宮礼子さんを訪ねるといいよ。」
結婚したばかりの頃、夫に言われた
この一言に導かれるように、私は当時
山形で芸術の灯を照らし続けていた
ぎゃるり葦を訪ねました。
山形で学生生活を送っていた彼はただただ
作品を眺めるだけだっただろうけれど、
卒業後も帰郷する度に顔を出していたから、
そこは、大切な、還る場所の一つに違い
なかったのです。
緊張した面持ちの私を、きっと当時と
変わらぬ笑顔とあたたかさで迎えて
くれたのが礼子さんでした。
色々なお話をしていく中で、
「ギャラリーを始めるなら
名刺が必要でしょ?
面白い名刺を作る人がいるから
その人に頼むといいわ。」
これが冬澤未都彦さんとの最初の出会いです。
ちょっとはにかんだような、物静かな瞳の奥には
きっと大事な世界をたくさんたくさん抱えている
人なんだろう。。
そう思いながら二言、三言会話を交わして
いうならば名刺を制作するにあたっての
ヒヤリングを終え、ほどなくして送られて
きたのが、私にとってこの道に入るスタート地点を
刻んでくれたガリ版刷りの名刺でした。

以来、細く、長く、その時々で濃度を
変えながらも繋がってきた一本の細い糸。
既にギャラリーに届いた作品を一つ一つ
手に取りながら、この運命の不思議さと
感謝の気持ちに満たされています。
パソコンもスマホも持たない冬澤さんとの
やりとりは、お手紙と電話です。
冬澤さんから届く封書は、まるでそれ
自体が作品のようで、その手の痕跡を
いつまでも眺めていたくなる。
騒がしい外野とは一線を画し、ひたすら
小屋で文字を刻み、制作に没頭する
姿は、私にはとても尊く、奇跡のように
思えます。
今回の個展では、宮沢賢治、
坂口安吾の短編の手製本に加え、
木版画、銅版画、油彩、木彫など
多彩な表現の作品をご紹介します。
都会のマンションでも飾りやすいサイズの
ものが揃っています。
静謐でシュールな趣を湛えながらも、
どこかクスっと笑みを誘う冬澤さんの世界。
刻んだ文字から始まる果てのない創作の旅を
皆様とご一緒に楽しみたいと思います。
ぜひこの機会に皆様のお越しをお待ちして
おります。
どうぞゆっくりとギャラリーに遊びに
いらしてください。



「羽前風路野草」額作品
